税理士試験に合格すると、開業税理士、勤務税理士など様々な活躍の場が用意されている。
そんな中、私は稀有なパターンの経理職として働いている。
私は経理職として、高度な税務知識を発揮しながら、ワークライフバランスを実現し、充実した人生を送っている。
私の転職活動について紹介しよう。
- 税理士試験合格後のキャリアについて知りたい方
- 税理士試験の合格でワークライフバランスを実現したい方
転職前後の比較表
私の転職前後の【仕事内容】【労働環境】【給与】についての比較表を掲載する。
20代で税理士試験に合格して、転職活動を経て、ワークライフバランスを実現している。
項目 | 転職前 | 転職後 |
---|---|---|
仕事内容 | ・資料整理などの雑務が多いのに顧問料が安い ・学んだ知識が生かせる場面が少ない | ・別表調整項目が多く、学んだ知識を存分に生かせて楽しい ・税務のみならず会計知識も学べる |
労働環境 | ・雑務が多いので、労働時間が長い ・確定申告時期は、給与据え置きで土曜出勤 ・休みが取りにくい | ・管理職候補としての採用 ・残業ほぼなし ・休みが取りやすい ・新たなことに挑戦しやすい余裕がある |
給与 | ・昇給がなく、基本給が低い ・残業の時給が最低賃金 | ・毎年昇給あり(ベースアップもあり) ・平均以上の年収 |
転職前
私の最初の就職先(転職前)は、税理士法人勤務だった。
財務諸表論を受講しているときに、ありがたいことに講師の方が勤務されている税理士法人にお誘いいただけた。
ただただ運が良かっただけなのだが、若い人間が積極的に質問をしていたので、好印象を抱いていただいたのだろう。金髪ではあったのだが、逆に目立って結果オーライだったのだろうか?
アルバイト
最初は、アルバイトとして採用していただいた。
業務内容や待遇を考えると正社員よりよかったのでは?思うほどであった。
仕事内容
会計ソフト(ICS・弥生)への仕訳入力と資料整理(領収書ペタペタ)が主な業務であった。
黙々と作業をする業務がほとんどであったため、これはこれで楽しかったが。
特に交際費や会議費の領収書を見て、おいしそうなお店があれば、食べログで調べるのがひそかな楽しみであった。
だが、ふと我に返ると自分は何をしているのだろうと考えてしまうこともしばしばあった。
労働環境
週5日の7.5時間/日勤務であった。これに関しては普通の労働時間であった。
給与
時給1,200円と他のアルバイトよりは高い時給をいただいていた。
その後、正社員として働かせていただいたが、アルバイトの時給>正社員時の残業の時給という逆転現象が生じていた。
アルバイトの時給を高くして、囲い込みをされていたのだろうか。
正社員
無事に正社員として登用していただき、担当も持たせてもらったが、将来のキャリアに不安を感じて退職することになってしまう。
仕事内容
アルバイト時代の会計ソフトへの入力や資料整理等の雑務は変わらず、顧問先への巡回や飲み会・社内外イベントの企画等さまざまな経験をさせていただいた。
ただ、中小企業は、別表調整が僅少のため、学んだ法人税の知識を生かす場面が少なかった。
一番絶望した点は、顧問料の安さである。
強豪ひしめく地域の税理士法人であったからなのか、地域柄なのか、顧問料が安かった。
単価が安いというより業務量に見合っていなかった。
こんなに雑務ばかりして月1万円、、、赤字。
今思うと、どんなビジネスにも言えることだが、稼げる者と稼げない者がいるだけで、
【税理士=稼げない】というわけではない。
私は、その事実を知らずに経理職に転職したのだが、税理士としての仕事は誇り高い仕事だし、稼げる仕事だとは思う。
労働環境
雑務の時間が多く、労働時間が長かった。
税理士試験の勉強もあるので、夜は勉強したかったため、朝早く(ときには始発)から仕事をしていた。
確定申告時期(2月1日~3月15日)までは、給与据え置きで土曜日出勤も行っていた。
このように労働時間も長かったので、休みが取りにくく、労基法で定められている有給休暇取得もぎりぎりのところであった。
給与
給与については月20万の賞与4回。
賞与の内訳は、20万×3回と決算賞与1回。
年収は400万に届かなかった。
昇給はなく、将来に不安を抱いたのことが転職の一要因だっだが、辞める直前に昇給制度が導入され、時すでに遅しの状態。(代表のさじ加減でいきなり1万円昇給)
給料に関して、残業時の時給が最低賃金ぎりぎりであったので、残業しても残業代で稼げる金額が少なく、ただし残業しないと仕事は終わらない状況であった。
転職を決意
私より悪い労働環境でお仕事をされている方もいらっしゃるだろうが、【安い・昇給なしの給料】【領収書貼りなどの雑務をこなすと赤字になるような顧問料】で将来の自分の生活とキャリアに不安を抱いた。
仕事をしながら法人税法を勉強していたが、無事に法人税法に合格して税理士試験の終わりが見えてきた。
その時点で、当時お付き合いしていた方との結婚を視野に入れると今の会社ではお先真っ暗だと感じたため、転職を決意した。
転職活動
新卒の就職活動では、挫折をしたが、転職活動では、自分の軸があり、かつ、仕事で様々な経験があったので転職活動は順調に進んだ。
コロナ禍
2020年に世界を震撼させたコロナウイルスが蔓延している最中での転職活動となった。
休みが取りにくいこともあり、リモートでの採用活動ができたので、時間休を取得して面接に参加することができた。
転職エージェント・転職サイトに登録
私は、何社かのエージェントに登録したのだが、それぞれのエージェントごとに考え方が異なっていたり、エージェントと人として合う合わないがあったりするので、転職活動をするときは、転職エージェント・転職サイト何社かに登録した方が吉である。
あるエージェントから条件に合った求人をご紹介していただき、無事その会社に採用していただいた。。そのエージェント方はとても親切で、今でも近況報告でメールのやり取りをしている。
転職活動の優先順位
それぞれ転職活動をするには理由がいる。やりたいことがある、年収が高い、ワークライフバランスを実現できる、などなど。
私の転職活動の軸は【ワークライフバランス(少ない残業時間)】と【定期的な昇給】であった。
後述するが、無事にどちらの条件も実現することでき、のんびり仕事をしながら、家族との時間を大切に、そして有意義に過ごしている。
この2つの条件を満たし、私の経験・知識が生かせる場所を探していると、大きい企業での経理職が合致した。
自己PR
参考までに私の自己PRの概要を記載する。
- コミュニケーションを円滑に行うことができる。
- 挨拶を大切にし、社内外の方との円滑なコミュニケーションを心掛けていた。
このような概要で、転職前の経験の具体例を交えた自己PRで面接に挑んでいた。
転職活動で大切なこと3選
自分を分析する
面接では、自分がその会社でどのような活躍ができるのかを伝えることが重要だ。
会社は、必要な(有能かどうかではない)人材を探している。探している人材とマッチしているかを判断するために、自分自身をしっかり分析して、自分のできることを会社に伝えよう。
会社を分析する
会社を調べることで熱意を伝えることができるし、自分がその会社で働いても問題がないかを判断する必要がある。 特に、業績や財務状況は自分の給与に関わってくるのでチェックしておくべきだ。
会社の求めている人材かどうかが重要
会社は、優秀な方をもとめてはいるが、求める人材は千差万別である。
優秀であろうが会社の風土に合わなそうな方や不釣り合いの方は、採用を見送られるのだ。
手前みそではあるが、現に私もある一社から採用も見送られたのだが、その理由が、【経歴や人柄は申し分ないが、この経歴だと長く働き続けてくれるか定かではない】というものだった。
転職活動成功
無事に希望の会社に採用が決まった。
後日談だが、最終選考者は税理士法人勤務の私と銀行員さんだったのだが、私を採用していただけた。
一概には言えないが、税理士法人での勤務者や税理士試験での合格科目がある人間の方を即戦力として評価していただけたようだ。
税理士法人での引継ぎが終わらず、退職日まで働き、翌日から転職先での業務を開始したのは、今となっては笑い話である。
転職後
無事に転職活動でワークライフバランスをつかみ取ったので、良かった点と転職後の悩みを一覧にした。
項目 | よかった点 | 悩み |
---|---|---|
仕事内容 | ・利益を求める傾向 ・別表調整項目が多く、学んだ知識を存分に生かせて楽しい ・税務のみならず会計知識も学べる | – |
労働環境 | ・管理職候補としての採用 ・残業ほぼなし ・休みが取りやすい | ・現状、リモートワークができない |
給与 | ・毎年昇給あり(ベースアップもあり) ・平均以上の年収 | ・がんばってもボーナスが変わらない |
仕事内容
利益を求める傾向
私は、会社は税金払って大きく成長していくものだと考えている。
ただ、新規設立の会社や小さい会社は、税金を払いたくない会社が多い。
そもそも赤字の会社が多いが、利益を減らして税金を減らしたいという顧問先が多かった。
だが、転職先では利益を稼ごうという姿勢がある。
良くも悪くも税金に興味がないのだろう。
別表調整が多くて楽しい
以前働いていた税理士法人では、別表調整がほとんどなかった。
転職して大きな法人の経理に携わることができ、別表の隅から隅までを堪能している。
がんばって勉強してきた法人税法の知識を存分に発揮でき、たいへん有意義である。
会計知識も学べる
会計士の監査の対象法人なので税務のみならず、会計基準も気にしなければならない。
会計と税務の両面から事象を考えることができるので、たいへん勉強になる。
労働環境
管理職候補
ありがたいことに管理職候補として採用していただいた。
そのおかげで、決算業務や申告業務を任せていただけ、貴重な経験をさせていただいている。
残業ほぼなし
転職エージェントから話を聞いている段階でも【残業がない】とのことだったが
実際に本当に残業がない。
10時間を超えることはないし、残業ゼロという月も珍しくない。
おかげで早く帰ることができ、ストレスが少ない。
休みが取りやすい
残業が少ないことに直結して休みも取りやすい。
課の人間が積極的に休みを取っているので雰囲気的にも休みが取りやすいのでありがたい。
給与
毎年昇給あり
子育てをしているので、年々お金が必要になってくる。
毎年一定額の昇給があり、昨今のベースアップも一定金額行われている。
平均年収以上
上場企業ほどではないにしても、ありがたいことにほどほどの年収をいただいている。
残業・ストレスが少なく、ワークライフバランスを保ちながらもらうには十分な年収をいただいていると個人的には思っている。
転職が成功しても悩みは尽きない
リモートワーク不可
業界柄なのか紙が多い。
なかなか紙業務がなくせないためリモートワークが難しい。
会社にはリモートワークの制度はあるが、私の課ではリモートワークができない現状である。
がんばってもボーナスが変わらない
がんばったとしてもボーナスは月給×月数のため、いくら評価されてもボーナスが変わらない。
がんばる理由・モチベーションの維持に迷走することがしばしば。
まとめ
項目 | 転職前 | 転職後 |
---|---|---|
仕事内容 | ・領収書貼りなどの雑務が多いのに顧問料が安い ・学んだ知識が生かせる場面が少ない | ・別表調整項目が多く、学んだ知識を存分に生かせて楽しい ・税務のみならず会計知識も学べる |
労働環境 | ・雑務が多いので、労働時間が長い ・確定申告時期は、給与据え置きで土曜出勤 ・休みが取りにくい | ・管理職候補としての採用 ・残業ほぼなし ・休みが取りやすい |
給与 | ・昇給がなく、基本給が低い ・残業の時給が最低賃金 | ・毎年昇給あり(ベースアップもあり) ・平均以上の年収 |
厳密にいうと、簿記論・財務諸表論・法人税法の合格後にワークライフバランスを実現した転職を成功させた。
家族との時間・自分の時間を大切に過ごすことができたので、とても充実した人生を送っている。
ただ、この会社に留まる必要はないと考えているし、税理士試験に合格しているので会社に依存せずに済む。
私の挑戦もTo be continuedだ。
あなたが税理士試験を受験する目的はなんだろうか?
税理士試験に合格することであなたの人生がより豊かになるだろう。
ぜひ合格をつかみ取ってほしい。
サクラサケ。